ポッドキャストのファイル管理

 

「ポッドキャスト」とは・・・

“Podcastはインターネット上で利用できる、エピソードで構成された番組です。録音されたオリジナルのオーディオやビデオが一般的ですが、テレビ番組やラジオ番組の放送、講義、演奏、そのほかのイベントを収録したPodcastもあります。
Podcastでは通常、それぞれのエピソードがオーディオやビデオなどの同じファイルフォーマットで提供されるため、購読者は毎回同じ方法で番組を楽しめます。...”
※(Appleのサイトより引用 「iTunes - Podcast - よくある質問:Podcastを楽しむには」)

ポッドキャストの基本的な使い方

※各ファイル、自動削除設定をクリックで解説を表示する。

使い方は人それぞれだが、基本的には、配信されサーバー上にあるファイルを、自分のデバイスにダウンロードして、再生して視聴し、視聴し終わったファイルは削除される、という流れになる。

これまで、ポッドキャストは、音声ファイルをデバイスにダウンロードしてから視聴するのが一般的であった。サーバーに接続してファイルのダウンロードを行うのはPCとそれに付属するソフトウェアのiTunesであり、そのiTunesとiPodを同期することで、音声ファイルを自由に持ち歩き、好きなところで視聴する、というのが一般的な利用のされ方だった。ファイルは所有するものであり、iTunesとiPodは親子関係でファイルのやり取りがなされていた。

 

問題点

1.ファイルの管理がやや分かりにくくなり、ユーザーの持つメンタルモデルとシステムのシステムモデルにズレが生じている。

2.ファイルの表示のパターンが増え、一覧表示や再生の際に問題が生じる場合がある。

生じている問題は2つである。このいずれも、iTunesとiPodが並列の関係になり、ユーザーが考慮しなければいけないファイルの属性が増えたが、システムやインターフェースが従来とあまり変わらないことによって生じていると考えられる。
(※「属性」は、ここでは、「再生済み」「未再生」「未ダウンロード」など、ファイルのステータスの意味で使用している。)

ファイルの属性が増えてしまった原因は、iTunesでもiPod(ここでは「ネット接続できるデバイス」という意味)でも音声ファイルをダウンロードできるようになったことに加え、ストリーミングによる視聴にも対応している為だ。これまでユーザーは、「未再生」か「再生済み」か、「未ダウンロード」か「ダウンロード済み」か、というくらいの属性を把握していれば問題なかったし、その表示も単純で分かりやすいものだったが、今は状況が異なっている。

1.ファイルの管理で起きるエラー

従来型のファイルの動きを下に図示する。「自動ダウンロード」と「自動削除」の設定があり、それによってファイルの流れを調整することができる。入口と出口がひとつずつなので、何も複雑なことはなく、ファイル管理は容易で、ユーザーの持つ概念モデルも単純なもので十分だった。

しかし、今では、例えば、「iTunesでダウンロードしたファイル」なのか、「iPodでダウンロードしたファイル」なのか等、ユーザーが属性を考慮して使わなければいけない仕様が増えている。また、両デバイスで異なる操作をした場合、同期の際どちらが優先されるのか等も分かりにくく、何より、同じ設定にしても違った結果がでる操作もある。

赤い部分が、ユーザーが新しく考慮しなければいけなくなったと考えられるファイル属性だ。これは必ずしも全く新しいファイル属性を意味しない。例えば、デバイス内のファイルに「未再生」と「再生済み」という属性は以前からあったが、そのことを考慮しなくても、特に問題なくファイルは処理されていった。これは常にiTunesとiPodがイコールの関係である場合には考慮する必要性の低い属性だった。

しかし、今では、同期しても必ずしもiTunesとiPodのファイルがイコールになるわけではない。なので、iPodでダウンロードされたのかどうか、それが再生済みかどうか等の属性の差が、同期後のファイル配置に影響するようになってしまった。その為、ユーザーはその属性の違い、それによって必要な操作も考慮してポッドキャストを使わなければいけなくなった。

ブルーの矢印は、同期した際のファイルの動きだ。同期が対照な形では成されていないのが分かる。これは、PCとiPodのストレージ容量を考慮した設計だと推測できる。PCは比較的容量が多いので、ファイルを溜め込みやすく、iPodは容量が少ないため、できるだけファイルを削除するような流れになっている。

 

ファイル管理に関する具体的な問題

・iTunesで「保存ファイル」化したファイルは、iPodの保存ファイルには同期されないが、iPodで「保存ファイル」化したファイルは、iTunesの保存ファイルに同期される。それどころか、iPodでダウンロードされたファイルは、一時ファイルも含めて同期の際すべてiTunes上では「保存ファイル」化されて、自動削除の対象から外れてしまう。

・逆に、iTunesでダウンロードされ同期されたファイルは、iPodで自動削除設定をオフにしていても、再生済みになると削除されてしまう。これは、iPodを「自動削除オフ」の設定で使っているユーザーにとっては混乱の元になる。

(それから、iTunesでダウンロードしたファイルは、未再生の間はiPodの「保存ファイル」の欄にリスト表示される。これは再生済みになると設定に関わらず自動削除されるから、ファイル管理的にはあまり意味はない。)

まとめると、考慮すべき属性は、このように展開したことになる。

2.表示によって起きるエラー

自動削除オン/オフ

iPodの「マイエピソード」の欄に、再生済みでファイルが削除されたエピソードもリストが表示され続ける。これはiPod側の自動削除設定をオンにすれば、解決できるが、オフにして使いたい場合、消すことができない。(デフォルトではオフになっている)

さらに、ファイルを順番に連続再生したい場合、ネットに接続していない状態で、このファイルのところまでくると、警告が出て再生がストップしてしまう。(接続している場合は、ストリーミングとして再生される)

また、そもそも未再生でないファイルも「マイエピソード」内に表示されてしまうと、順番に再生したいとき、間に再生済みのファイルがあるので、手動でいちいち飛ばさなければいけない。

 

これはiTunesでも同じことが起こる。iTunesではデフォルトで自動削除がオンになっていて、その場合、ダウンロードされた未再生ファイルだけが表示され、とても見易いリスト表示になっている。

しかし、自動削除をオフにすると、「未再生」タブは「マイエピソード」タブに変わり、ダウンロードされたファイルもされていないファイルも、再生済みのファイルも未再生のファイルも、すべてが時系列順に同一画面にリスト表示され、大変管理が面倒になってしまう。この設定で使いたい場合は、手動でファイル管理するのに苦労する。

(未ダウンロードでマイエピソードに表示されているファイルは、ストリーミングで再生し、再生済みになったファイルだ。再生途中ではマイエピソードに追加されず、再生済になったタイミングでマイエピソードに追加される。これはストリーミングの未再生ファイルを管理する為には不便な仕組みだ。再生途中のものもマイエピソードに表示されれば、いちいち配信一覧の中から探す必要が無い。

これは、ある属性のファイルをインターフェース上にどう表示するか、という対応付けの問題だと考えられる。

 

配信ファイルの表示

またストリーミングでポッドキャストを聴きたい場合、iTunes上の「配信」タブの中では、「未再生」「再生」を判断するための青丸マークがない。ダウンロードすれば未再生としてマークされるが、ストリーミングで聴きたい場合、どのファイルがすでに聴いたものか、判断することができない。

 

iPod上では、ダウンロードしたファイルと同じようにマークがつく。色が違うことでダウンロードされていないファイルだとひと目でわかる。iTunesとiPodで表示が一貫していない、という問題がある。

 

ストリーミング時代へ向けて、過渡期的な問題

これらの分析から、自分の使い方に合っていない設定のままポッドキャストを使っていると、意図しないファイルがストレージに残ってしまったり、または削除せず保存しておきたかったファイルが自動で削除されてしまったりする可能性があることが分かる。

同時に、これはダウンロードして聴く時代からストリーミングで聴く時代への過渡期に生じている問題であると考えられる。ストリーミングがメインの使い方になれば、ここで取り上げた問題のほとんどは自然と解消される。というのも、問題のほとんどがダウンロードされたファイルに起因しているからだ。

とはいえ、時代が完全に移行するまでは、このようなトラブルを防ぐ為、ユーザーが自分に合った設定を容易に選び取れるようなサポートが必要だと感じる。

 

 

改善

システムやインターフェイスを大幅に変えるのではなく、システムの概念モデルをユーザーに正しく理解させることをまず考える。ファイルがどう動いているのか、どの設定がどう作用するのかが分かれば、システムは今のままでも、ユーザーはほぼ問題なくポッドキャストを使用することができるだろう。

しかし、その場合でも残る不便な点を洗い出し、そこをシステムの改善点として説明する。

使い方を5つに分類して提案する

まず、ポッドキャストの使い方として5つの分類を行い、その中から、ユーザーに自分が使いたいものはどれかを選んでもらう。

まず、どちらのデバイスでファイル管理をしたいのか、また、1度聞けばいいのか、または複数回聴いたり、アーカイブとして残したりしたいのかを選ぶ。

奇数の「タイプ1」「タイプ3」「タイプ5」は、基本的にファイルを溜め込まないタイプで、保存したいファイルがある場合は、個別に保存をする為の操作を行う。偶数の「タイプ2」と「タイプ4」は、逆に、ファイルを貯めこむタイプで、要らないファイルを個別に削除する為の操作を行う。

例えば「ニュース系のポッドキャストは一度聞けばいいし、早く聴きたいから『タイプ3』がいい。でもバラエティ系のポッドキャストはアーカイブしたいから『タイプ2』にしたい」など、ユーザーは個別のポッドキャストに対して、別々のタイプを選ぶことができる。

このタイプを前もって選んだ上で、それぞれのタイプの設定方法やファイルの流れ方、使い方の注意点を理解してもらえば、ファイル管理のトラブルをかなり減らすことができるだろう。

「タイプ1」の使い方

「タイプ1」は、ほぼデフォルト設定であり、従来型(iPodがインターネットに繋がらない時の使い方)と同様のファイル管理である。基本的には、iTunes上を流れていくファイルを、iPodに同期して聴く、という形になる。iTunes、iPod共に一時ファイルだけがある状態で、もし保存しておきたいファイルがあれば、iTunes側で保存ファイル化する。

設定
iTunes・・・ 自動ダウンロード:ON、 自動削除:ON
iPod・・・自動ダウンロード:OFF、 自動削除:ON/OFF(どちらでも変わらない)

注意点としては、iPod側で再生済みにしたファイルは、同期後24時間でiTunesからも削除されてしまうので、保存ファイル化する場合は同期前か同期後24時間以内に行わなければいけない。もしくは、iPod上で保存ファイル化しておけば、同期の際iTunes側でも保存ファイルとして残る。その場合、iPodにもファイルが残ってしまうので、残したくない場合は手動で削除しなければいけない。

「タイプ2」の使い方

「タイプ2」は、iTunes上から自動でファイルが消えない設定になっている。削除は全て手動で行うので、間違えてファイルが消えてしまう、という事態を防げる。また、自動削除されないので、「タイプ1」と違ってiPodで保存ファイル化する必要はない。手動で削除する前に、iTunes上で保存ファイル化すればいい。とりあえず全てのファイルをキープしておいて、自分のタイミングでファイル管理を行うことができる。

設定
iTunes・・・ 自動ダウンロード:ON、 自動削除:OFF
iPod・・・自動ダウンロード:OFF、 自動削除:ON/OFF(どちらでも変わらない)

「タイプ3」の使い方

「タイプ3」はオフラインでも聴けるという以外はストリーミングに近い形になる。iPodでダウンロードし、視聴し、保存ファイル化するか、削除される。iTunesに同期する必要もない。ただ、PC上にファイルのバックアップを取りたい場合、同期することになる。

設定
iTunes・・・ 自動ダウンロード:OFF、 自動削除:ON/OFF(どちらでも変わらない)
iPod・・・自動ダウンロード:ON、 自動削除:ON

注意点としては、iPodでダウンロードされたファイルは、保存ファイル化されていなくても同期の際にiTunes上で「保存ファイル」としてキープされてしまう為、同期する時、保存したいファイル以外は全てiPod上から削除してある必要がある。もしくは、同期後に、不要なファイルをiTunesから削除する。

このシステムは、保存ファイル化した覚えのないファイルがずっと消えずにいるというトラブルを引き起こす原因になっている。

「タイプ4」の使い方

「タイプ4」はほぼ「タイプ3」と変わらないが、iPodからのファイルの削除が全て手動になる。間違って削除するのを防ぎたい場合や、例えば英語学習の目的で同じファイルを複数回聴きたい(しかし保存したいわけではない)場合などに使える。

設定
iTunes・・・ 自動ダウンロード:OFF、 自動削除:ON/OFF(どちらでも変わらない)
iPod・・・自動ダウンロード:ON、 自動削除:OFF

「タイプ3」と同じく、同期する際は、不要なファイルを削除してから行う必要がある。

「タイプ5」の使い方

「タイプ5」は、オンデマンドラジオ的な聴き方なので、ファイルのことはあまり考えなくてもいい。ただ、保存したいエピソードがあった場合だけ、ダウンロードすればいい。

設定
iTunes・・・ 自動ダウンロード:OFF、 自動削除:OFF)
iPod・・・自動ダウンロード:OFF、 自動削除:OFF

注意点から考えるファイル管理改善案

タイプ1、3、4には、いくつかの注意点がある。それは、ユーザーの意図と反するであろうファイルの動きを前もって理解してもらうためのものだ。逆に言えば、そもそも意図と反するような動きにならないようシステムを改善する余地があるかもしれない。

タイプ1の注意点

・iPod側で再生済みにしたファイルは、同期後24時間でiTunesからも削除されてしまうので、保存ファイル化する場合は同期前か同期後24時間以内に行わなければいけない。

・iPod上で保存ファイル化しておけば、同期の際iTunes側でも保存ファイルとして残る。その場合、iPodにもファイルが残ってしまうので、残したくない場合は手動で削除しなければいけない。

これは基本的にファイルを保存しない設定をしている中で、保存したいファイルがあった場合の問題である。iTunesだけで管理をすれば、保存ファイル化するのを忘れてうっかり削除してしまうエラーが起こりやすい。それを防ぐためiPodで保存ファイル化しておこうと思うと、同期後iPodでいちいちファイル削除をしなければいけない。

改善案としては、「保存ファイル」がiTunesとiPodで別立てになっているので、iPod上で「iTunesに保存」という属性を付ける機能を増やせば解決する。これ以上属性を増やすのはあまり良くないかもしれないが、概念モデルを正しく理解してもらえれば、そこまで混乱はしないはずだ。

この属性を加えることで、iPodにはファイルを残さず、同期の際に確実にiTunes上で保存ファイル化し、うっかりファイルを削除してしまう可能性を下げられる。

ユーザーは毎日iTunesを開くとも限らないし、聴き終わってすぐに同期するとも限らない。「次の同期の際に、このファイルを保存しよう」と計画したとしても、忘れてしまったり、どのファイルが目的のファイルだったか分からなくなってしまう可能性がある。

「iTunesに保存」という属性を増やせば、聴いた直後に保存の指示を出せ、かつiPodに不要なファイルが残ることも防ぐことができる。この属性は、ストリーミング時代になった後でも役に立つ可能性もある。

 

タイプ3・タイプ4の注意点

・iPodでダウンロードされたファイルは、保存ファイル化されていなくても同期の際にiTunes上で「保存ファイル」としてキープされてしまう為、同期する時、保存したいファイル以外は全てiPod上から削除してある必要がある。もしくは、同期後に、不要なファイルをiTunesから削除する。

これは、そもそもiPodでダウンロードした一時ファイルが、同期するとiTunesの保存ファイルになってしまうという機能に起因する問題なので、それをなくせば済む。これは、完全に常時オンラインのユーザーと、オフラインで使用する場合もあるユーザー両方を中途半端に考慮した設計にiTunesがなっているから生じている問題だと考えられる。

つまり、常時iTunesでもiPodでもファイルをダウンロードする、という今では当たり前の使い方を完全に想定しきれていない。この使い方をするとiTunesには消えて欲しいファイルがどんどん積み上がっていってしまう。

恐らく、基本的にはiTunesでダウンロードを行うが、特別な場合iPodでもダウンロードをする、という使用法を元に設計されているのではないか、と考えられる。だから、iPodでダウンロードしたファイルはシステム上iTunesより重要度が高くなっている。だが、そんなつもりのないユーザーからすれば、要らないファイルがiPodでダウンロードした、というだけで無駄に保存されていってしまう。

表示の問題の解決


※改善イメージ

自動削除をオフにした時に、「マイエピソード」内に多くの属性のファイルが混在し、未再生ファイルだけを再生するのが面倒になる問題については、単純に再生済みの一時保存ファイルを下部にまとめればいい。

これは自動削除オンの時に、「再生済みエピソード(削除対象)」という風にファイルがまとめられるのと対の関係になる設定なので、導入しても混乱はあまり起こらないのではないかと考えられる。

 


※改善イメージ

また、同期の際、両デバイスのファイルの状況を並べて一覧できる画面を作れば、より直感的にファイルの操作が行えるだろう。

というのも、今のシステムでは、同期の結果がどうなったかというフィードバックは、iTunesとiPodを見比べなければいけないが、このように並べて見比べられる画面があれば、同期のフィードバックを直ちに得ることができ、間違いがあった場合でもすぐに対処しやすい。

ユーザーの行為をスムーズに

ユーザーに適切な概念モデルを持ってもらうことで、ユーザーが目的の行為を達成しやすくするのが、この提案の目的だ。

ユーザーがある視聴の方法を望んだ時や、あるファイルの操作を行いたい時、適切なプランを立て、順序良く操作し、それが上手くいったことをすぐ確認できる為には、個別の設定についてのヘルプだけではなく、システム全体の流れを(単純化されたものでも)理解してもらうことが必要だ。

また、正しい概念モデルを持ってもらえば、問題のあるファイルが生じたとしても、ユーザーはヘルプ等を参照しなくても容易に対処できるだろう。