第1課題:コミュニケーションと認知

私たちはコミュニケーションの中で、何を受け取り、何を記憶し、何を伝えようとするのだろう?

人々がコミュニケーションする課程で、メッセージはどのような要因で、どのように変容・変形されるのだろうか。またメディアの違いによってメッセージの伝わり方に違いはあるのだろうか。

この課題では情報デザインへの導入部として、様々なメディア 言葉イメージ(画像)地図ジェスチャー(身振り)映像などを取り上げ、人間の認知的メカニズムがコミュニケーション・デザインにどのように関わっているのかを実験をとおして学習します。
また同時に、実験・観察・記録の方法と情報の分析の方法も習得します。

ここでは、メッセージの構成、コミュニケーションの流れ、メディアの特性、認知の仕組み、理解と記憶のメカニズムなどを考察し、コミュニケーション・プロセス、情報の交換という視点から、コミュニケーションとデザインの関係を改めて考えてみることがねらいです。

第一課題 実験の概念図(地図の場合)

実験(地図)の様子

課題の進行

 

伝言ゲーム(言葉、イメージ、文字、ジェスチャー、地図、映像)の実験

  1. グループごとにメディアを選び、それぞれのメディアに応じた実験の準備をする
  2.  「言葉」「イメージ(静止画像)」「ジェスチャー(身振り)」「地図」「映像」

  3. 被験者をあつめ、発話法によって情報の伝わり方をさぐる実験をおこなう
  4. 実験内容:

    1. 教示係が被験者のすべき事を解説する
    2. 被験者は、それぞれのメディアによる内容を見て記憶する
    3. 被験者は、記憶した内容を発話しながら紙にメモを作成する
    4. この時、被験者が記述する手元や発話内容をビデオカメラで記録する
    5. 被験者は、作成したメモを示しながら、カメラに向かい他の人に伝えるように解説する
    6. 教示係が被験者に記憶のプロセス、特徴について質問する
  5. 実験結果を分析する
  6.    

  7. 実験結果を元にコミュニケーションの流れについて考察する
  8.    

  9. 実験内容と分析・考察の結果をクラスでプレゼンテーションする
  10.    

実験の手順  「地図」の場合

実験用素材ビデオ作成

実験用の視聴サンプルのVTR撮影
(地図を指し示しながら目的地までの道のりを説明する様子を撮影)

実験内容

1:被験者Bがモニタで素材VTRの説明を見て覚える
 (メモはとらない)

2:被験者Bが記憶を基に他人に説明するための地図の再現と説明用メモを作成する
(被験者には頭で考えたことを常に口に出しながら描いてもらい、その様子を手元の図画面を中心にVTR録画する)

3:被験者Bが自分で描いた地図を用いて、説明用メモを見ながら、他人に道案内するつもりで図の説明をする

2019年度 第1課題作品

藤子不二雄のマンガ「オバケのQ太郎」の一コマを取り上げ、画像情報がどのように伝わっていくのか、どのように記憶されていくのかを実験を通して調べました。
(末安、菊野、沼田、濵田、

 岡本、高橋)

NHK Eテレの番組「もういちど日本」を実験素材として取り上げ、映像メディアにおいて情報がどのように伝わっていくのかを考えます。
(ファン、篠崎、石上、清水、

 岡野)       

第1課題 A班プレゼンテーション・ムービー(2019年5月24日収録)

第1課題 B班プレゼンテーション・ムービー(2019年5月24日収録)

A班「イメージ」実験風景 



オープンキャンパスでの第1課題作品展示風景(2019年6月15日、16日)


過去の作品例

2018年度 第1課題作品

藤子不二雄のマンガ「オバケのQ太郎」からのひとコマを素材にして、静止画像の伝わり方や記憶への残り方を調べました。
(石川、河原、小玉、ハン、
 森脇、米山、)       

2017年度 第1課題作品

朝日新聞「天声人語」を素材に、文章を読み上げた音声情報を人々はどう解釈し、どう整理して、他の人に伝えようとするのかを分析しています。
(石川、大石、木南、斎藤、東)

藤子不二雄のマンガ「オバケのQ太郎」からのひとコマを素材にして、静止画像の伝わり方や記憶への残り方を調べました。
(浅井、蜂谷、保坂、松川)       

地図を指し示しながら、目的地までの道順を案内する映像を被験者に見てもらい、地図情報の記憶の仕方、伝わり方をさぐります。
(市ヶ谷、佐藤、磯崎、松下、米山)

第2課題:インタラクションとユーザビリティ

ユーザーテストをとおしてインタフェースを考える

私たちがふだん銀行のATMを使って振り込み操作をしたり、インターネットでチケットを 買ったり調べものをしたりするとき、 そこではモニターの向こうの世界と私たちのあいだで何が起きているのでしょうか。
この課題では、情報デザインにおける人間とコンピュータとのインタラクティブな(対話的な)プロセスを、実際にユーザーの操作テストを行い、そのデータの分析をとおして考察し、改善案もさぐっていきます。

  • 私たちにとって、何故生きた情報が必要なのか?
  • 死んだ情報と、生きた情報とは何が異なるのか?
  • 私たちは、生きた情報をどのようにして取り扱うことができるのか?
  • 生きた情報の活動する仕組みはどのようになっているのか?
  • 私たちの生活になぜ情報デザインが必要なのか?
  • 人と情報システムが対話をするとはどのようなことなのか?
  • 情報デザインは、どのように新しいのか、何が問題なのか?
  • インタラクションはなぜ必要なのだろうか?
  • 情報システムはどのようにしたら使いやすくなるのか?

第2課題とユーザー・テストの実験の目的

  • 情報機能を内蔵した電子機器、ソフトウェア、など認知的人工物を対象にして、ユーザーに実際に使用してもらい、ユーザーが仕事(タスク)を達成するインタラクティブなプロセスの分析、およびタスクの要素と構造と問題点などの発見を行なう方法を修得する。
  • ユーザーインタフェーイスのデザインで重要なユーザビリティ(操作性=取扱のしやすさ、認知性=分かりやすさ、快適性=心地よさ、など)とはどのような問題なのかを、実際に体験してみる。
  • 情報機器の情報構造(システムモデル)と、ユーザーの概念モデル(メンタルモデル)、デザイナーの概念モデル(デザインモデル)との関係を考える。
  • タスク・プロセスをシミュレーションしたり、プレゼンテーションするためのコンピュータ・ツールを修得する。(HTML, CSS, JavaScript)

課題の進行手順

  1. - 情報機器類の選定
    (使いにくさの問題点のあるネットにつながった機器あるいはサイトを探す)
  2. - ユーザーテストのリハーサル
  3. - 被験者を集めユーザーテストの実施と記録
    a - 説明役(教示係・発話誘導者)、
    b - カメラ記録担当(ビデオ撮影)、
    c - 誘導・整理係、他
  4. - プロトコル分析
  5. - タスク・プロセスの分析
  6. - 情報フローチヤートの作成(情報構造を明確にする)
  7. - ユーザーのリクアイアメントの抽出、ユーザビリティの検討
  8. - リデザイン(改良デザインの提案)
  9. - プレゼンテーション素材の作成(Webプレゼンテーション)
  10. - プレゼンテーション実施(試験週間中または試験週間明け)
  11. - まとめをHTMLで制作してアップロードする

2019年度 第二課題ユーザビリティの実験風景 上段「Yahoo! 知恵袋」、下段「リコーTHETA」

2019年度 第2課題作品

A班:
新規ユーザーに優しくない!?

-Yahoo! 知恵袋アプリ-

Yahoo! JAPANのアプリ「Yahoo! 知恵袋」を素材として取り上げ、分析、考察、ユーザビリティテスト、結果の検証・分析を行ない、新たな改善案を発表しました。

B班:
失われた記憶事件

映像メディアを用いた実験から探る記憶の仕組み

株式会社リコーの360度カメラ「リコーTHETA」を対象に、撮影、パソコンへ転送、アプリで加工、というプロセスをユーザビリティの実験を通して検証、考察し、改善策の提案に至りました。

第2課題 プレゼンテーション・ムービー

過去の作品例


2018年度 第2課題作品

Yahoo! MAP アプリ

- 情報の整理による快適な操作を試みる -

スマートフォン用アプリ「Yahoo! MAP」を取り上げ、実験を通してインタフェース、ユーザビリティの問題を探ります


第2課題 プレゼンテーション・ムービー(2018年7月23日収録)

2017年度 第2課題作品

A班:
新参者を寄せ付けないデザイン

-2ちゃんねるアプリ、JaneStyleのユーザビリティ-

電子掲示板サイト2ちゃんねるのブラウジングアプリ「JaneStyle」を取り上げ、新規ユーザーに対して不親切な設計の問題を考察し、改善案を提示します


B班:
はじめての同人誌印刷

トム出版再構成
   

同人誌印刷会社のwebサイトに関して、分かりづらい料金表の問題点を、グラフィカルな面と構造的な面の両方から考察し、改善案をさぐります


C班:
mercari

暗黙の了解の解消による 新規ユーザーの獲得

個人の売り手と個人の買い手を結び、商品の売買をサポートするアプリケーション「メルカリ」を取り上げ、分かりにくさの理由をさぐって、新規ユーザーにとっても参入しやすいものになるよう、改善策を提案します

第2課題 プレゼンテーション・ムービー

「誰のためのデザイン?」の経験レポート

身の回りのデザインについて、人間中心設計(HCD)の観点から見つめ直してみよう

D.A.ノーマンの著書「誰のためのデザイン? - 認知科学者のデザイン原論 - 増補・改訂版」(原題:"The Design of Everyday Things - Revised and Expanded Edition" )をまず読んでもらいます。
その後、その内容について考え、日常生活で無意識に利用している道具、機器、インタフェース、サイン、空間、状況、等々から、各自、使い勝手の悪いものを—つ取り上げて、そのデザインの問題点についてレポートを作成し、HTMLファイルとして提出します。

この課題の目的は主に以下の三点です。

  • 情報デザインの基本的な考え方を述べたこの書物を読んで理解すること
  • 身の回りのデザインを観察し情報デザインの観点から考察すること
  • 情報デザインにおいて最も重要なインターネットのツールであるHTMLを理解し、ネットに上げられる形でまとめること

ノーマンによる七つの基本的なデザイン原則

  • 発見可能性
  • 行為の可能性と機器の状態を判断できる

  • フィードバック
  • 行為の結果と現在の状態についての情報。行為に対する反応。

  • 概念モデル
  • システムの構造や使い方の概念図。ユーザーのメンタルモデルとデザイナーのデザインモデルが一致するのが望ましい

  • アフォーダンス
  • 行為の可能性

  • シグニファイアー
  • 事物の知覚された使用可能性。知覚されたアフォーダンス。

  • 対応づけ
  • 二つ以上のものの間で、直感的に、位置や色などで関係づけること

  • 制約
  • 行為の可能性、物理的制約、論理的制約、意味的な制約、文化的な制約があり、行為を導く

武蔵美内での問題のあるデザイン事例

大学8号館のシグニファイアーの乏しいドアー(押すのか引くのか分かりづらいので、わざわざ誰かがドアノブの上に文字を貼り付けてくれています)
2015年4月撮影

大学9号館の文化的制約を無視したドアー(赤い壁の赤いドアーが男性用、グレーのドアが女性用。慌てて女性用トイレに駆け込んでしまった男性もいたようです)
2015年4月撮影

「誰のためのデザイン? - 認知科学者のデザイン原論 - 増補・改訂版」表紙イメージ

目的:

  • 実際に利用されているデザインをユーザの立場から見ることをとおして、デザインの多様な側面と広がりを考えてみよう。(デザインは形、表現だけから成立しているのではない)
  • デザインについて書かれた基本テキストの読み方を身に着けよう。(より広く深いデザインの世界に入っていくために)
  • デザインに関連した原理、応用の方法などを、具体的なデザインに結びつける考え方を学ぼう。(「原理・方法 ←→ デザインの組立」を考えてみよう)

課題制作のプロセス:

  • とりあえず、第三章まで読んでみる。
  • 身の回りの道具、機器、サイン、システムなどから問題のあるものをとり上げ、その使い辛さの問題点が、どのような人間の行動の原理に関連しているのか、如何に生じているのかを考え、説明してみる。
  • タイトル、文章、写真、イラスト、説明図、そして、キーワード、イメージ(可能なら実写映像やアニメーションも)などの情報の要素(インフォメーション・ユニット、ブロック)を適切に用いてレポートを構成する。
  • まとめたレポートをHTML・CSS・Javascriptなどを用いて、Webページにデザインし、情報デザインのサイトにアップロード(サーバーヘの保存と公開)する。

2019年度 「誰のためのデザイン?」経験レポート 課題作品
   

okamoto.2019

キーボードは覚えづらい


なぜこうもキーボードのキー配列は覚えづらく訓練が必要なものとなっているのだろうか。 それはおそらくキーボードのデザインが悪いせいではないだろうか。 その理由を、2つの観点で考えてみた。

shinozaki.2019

レバーはどっちに引けば
いい?

水道のレバーを 上か 下か 左右か どの方向に動かせば良いか迷ったことはありませんか?
いまいち分かりにくい水道のレバー。なぜ私たちは間違ってしまうのでしょうか‥‥‥

hwang.2019

iMacはなんか
使いづらかった。

本体とモニターが一体化しているスタイリッシュなiMacは、USBの差し込み口が背面にあるせいで扱いづらい。 キーボードにも一箇所差し込み口はあるけど、ひとつ以上差し込むとしたら背面の差し込み口を使うしかない。

過去の課題作品

kawahara.2018

「ほたるスイッチ」での
認知の混乱

照明機器に使われる「ほたるスイッチ」での「点灯サイン」と「消灯サイン」の混乱について考察し、解決案を提示した

kodama.2018

A design and position


ある大学での間違いやすいトイレのサインを取り上げ、なぜ間違えるのか、デザインのどこに問題があるのかを考察した

yoneyama.2018

コインランドリーでの
失敗

コインランドリーで操作部を間違えた経験を取り上げ、デザインにおける「対応づけ」の必要性を考え、解決案を提示した

Sato.2017

本当にラクラク?
らくらくスマートフォン

お年寄り向けスマートフォンに機種変更した祖母が、最も悩んでいた、メール作成までの過程で見つけた問題点を分析し、改善案を提示

Ishikawa.2017

ヘアードライヤーの
問題点

ドライヤーのスライド式スイッチのデザインモデルがユーザーに伝わりにくい問題を、アフォーダンスとシグニファイアの観点から考える

Isozaki.2017

AC北斗
〜磯崎修羅への道〜

コントローラーの操作において、何が悪かったかのフィードバックが欠けた練習モードが、うまくいった場合と比較できず、行為レベルの学習の大きな妨げになっている

Matsukawa.2017

なぜUSBメモリを
正しく差し込めないのか

ノーマンの「行為の7段階理論」にUSBメモリの使用をあてはめ、そのどの部分に問題があるのかを考える

Kobayashi.2016

西武バスの列

わかりにくい

国分寺駅北口バス停におけるサインシステムの問題をとりあげ、分かりにくさの原因とその改善策を提案しています。

Yamaguchi.2016

押しすぎるタイマー

家庭用冷風扇のタイマー設定時の問題点をとりあげています。 押す回数と表示ランプの不一致、エラーに対する不寛容さなど、確かに使いづらそうです。

Hamamoto.2016

ポッドキャスト の
ファイル管理

iPodとiTunesでダウンロードした際の ファイル管理の問題点をとり上げています。パソコンとiPod のストレージ容量の差を考慮した設計がトラブルの原因のようです。

Sasaki.2016

扉を開けるための取手

ドアをあけて外へ出ようとしたが、取手を回しても開かず、閉じ込められてしまいました。自身の体験からシグニファイアーと対応づけの問題を考えます。